「9/11委員会報告書」試訳公開に当たって

    

翻訳版は「9/11レポート」として、解説版は「9/11の真実を求めて」として出版社「ころから」より刊行いたしました。ご協力にお礼申し上げます。

「試訳版」を掲載する意義は少なくなっていますが、とりあえず参考資料として、修正を行わないまま、しばらく残しておきます。ご了承ください。

 
2001年9月11日(火曜日)朝、アメリカ航空会社の民間航空機4機がハイジャックされ、乗客を乗せたまま地上の建物に突入するという事件がおきた。「アメリカ同時多発テロ」と呼ばれるようになるこの事件によって、飛行機の乗客、乗員と地上の建物の中にいた3,000名近い人々が殺された。その中には合計24名の日本人も含まれていた。犯行はアルカイダと呼ばれるイスラム原理主義テロリスト集団によると報道されたが、どのようなグループなのか、目的は何なのか、なぜ全く無関係な多くの人々を犠牲にしたのか、すぐには理解出来なかった。しばらくの間、テレビや新聞は大々的に報道したが、表面的な現象を追うことが中心で、その本質に迫るものはあまり見当たらなかった。
 
  アメリカでは、公的な調査が始まっていた。まず動いたのは上下両院の合同調査委員会だった。これに対し、犠牲者家族が結成したグループは、さらに広い全面的な調査を要求してロビー活動を活発に行った。議会の調査が進んでいたこともあり、政権側はあまり乗り気ではなかったが、ついに特別調査委員会を結成して追加調査を行うことを法令により決定した。2002年11月、共和・民主各5名(正、副委員長各1を含む)、スタッフ59名よりなる委員会が活動を開始した。その目的は、被害を防ぐこと出来なかった責任者を追求することではなく、党派性にとらわれず、真実を究明して再発を防止するための短期的、長期的手段を「勧告」として提案することにあった。予算は抑制的なもので300万ドル、活動期限は2003年5月だったが、最終的には2か月延長され、報告書の発刊は7月になった。報告書は400ページを超える大冊だったが、一冊10ドルのペーパーバックとして広く発売された。

 この報告書は、日本でも全13章のうち6章がすでに翻訳され、「ダイジェスト」として刊行されている(*)。ただし、それは「日本国民にとって関心のある部分」のみを訳したとのことで、イスラムについて書かれた第2章や、攻撃前、最後の「大統領日報」(8月6日付)を欠いていた。私はいずれ全訳がが出版されるものと期待していたが、そのような動きは認められなかった。やむなく、私はその全訳に挑戦することにした。英語になじみがなく、英語圏での生活経験もない私にとっては無謀な行為だったが、私には助けてくれる多くの友人、知人があった。
 その方々の援助を受けて、一応の訳はできた。しかし、その監修者を見付けることができなかった。10名近い方に当たってみたが、皆様ご多忙で、このような大冊を見ていただくのは無理のようだった。その後の日本と世界の動きはさらに激しく、この報告書の翻訳は、ジャーナリズムの上でもまた学術的にも時期を失した感が強かった。しかし、その邦訳があることは、研究の入門者や、中央、地方の行政機関や危機管理部門に関わる人たちに貴重な先例を提示することになると思った。

 苦慮した挙句思いついたのが'Wikipedia'方式による監修である。試訳段階で公開し、多くの方にその得意とする分野をチェックしていただこうという,やや身勝手な考えだ。しかし、それによって事件の真相を理解する方も増えるに違いない。というわけでここにあえて拙訳を公開し、皆様のご批判を仰ぐことにしたい。真実に近づくために、多くの方のご援助をいただけることを願っている。
 (*)WAVE出版 2008年5月発刊

現在、出版のため校正の作業に入っております。その段階で、本「試訳版」に修正が必要なところが出てきていますが、出版業務に追われ、今のところ修正を行っておりません。ご了承ください。

読者の方へのお願い
 
難解な訳文に挑戦していただき、ありがとうございます。下記の点について、ご協力いただければ幸いです。


(1)翻訳・文意のチェック
(終了します)

*公開した翻訳あるいは解釈について問題があると考えられるところがあれば、ご指摘ください。自分が迷っている個所は、下線、英短語等をつけました。報告書はPDF版が無料公開されていますので、必要な場合、下記のリンクによりそれをご覧ください。

9-11 REPORT9-11 REPORT

https://www.9-11commission.gov/report/911Report.pdf
 なお、公開訳文の節毎に、原報告書のページを記載しましたのでそれをご利用ください。


*原文の内容を否定する論評はご遠慮ください。

*申し訳ありませんが、謝礼は無いものとお考え下さい。
(もし全文が公刊される場合には、翻訳協力者としてお名前を記させて頂くことを考えております)

*異なる訳文が提出された場合、最終決定は当方で行わせていただきます。

*この訳文による翻訳権は当方に帰属することをご了解ください。

*早急に取りまとめを行い、最終案を公開したいと思っております。
 なお、この間にも並行して改定作業を行いますので、ご了承ください。

*特に翻訳が困難だった個所は(3)に記しましたので、ご教示ください。

*投稿される方は、お名前(本名)のほか、できればご住所、アドレス、お仕事などをお知らせください 。
(個人情報の保護については十分注意を払います


メール送信(
終了いたします)


(アドレスをクリックしていただくと、メール用紙が表示されます)

検討の結果、
修正した個所は青字で示します。

2). 解説版の出版(計画)について
 平易な文章で書いたといわれる報告書ですが、かなり難解です。したがって状況を整理するとともに、事件を近代史の中に位置づけ、またイスラム原理主義と日本との関係について補足した「解説版」の発行を企画しております。
また、ビルの倒壊についても、NTSBの報告書に準拠して触れるつもりです。
出来れば来年(2021年)秋ごろの発行を予定し準備中です。

その際はご援助をお願いします。

翻訳版は「9/11レポート」として、解説版は「9/11の真実を求めて」として出版社「ころから」より刊行いたしました。ご協力にお礼申し上げます。





 
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(3)翻訳作業中に生じた問題点

①大統領から発令される命令
 日本では’Executive Order’が「大統領令」とされてきました。ところが本文では、(形容詞的な部分を除くと)クリントン大統領、ブッシュ大統領共に、’presidential directive'という言葉を使っています。前者との違いを示すため、「大統領指示」としておきました。 このほか一例ですが、'presidential findings'もあります。これは「大統領見解」としました。
  しかし、日本の新聞やTVでは、あまり厳密な区分はなく、すべて「大統領令」としている様にも見えます。これらに差があるのか、翻訳は?
 以上のほか、'Memorundum of Notification':MON、訳は「通告メモ」が、比較的簡単な作業で出されるようです。前者よりは軽い扱いのように見られますが、これはどのようなときにだされるのでしょうか。

②空軍の役職
 'Mission Crew Comannder'のmission は、交代直で任務についている、当直の指揮官と解釈して良いでしょうか。
また、原文43ページの weapons director とは、どのような任務の人でしょうか。

③CIAの秘密作戦
 covert action とclandstein という単語が多数使われます。どちらが秘密性が高いのか良くわかりませんが、前者を隠密工作、後者を秘密(作戦)としました。

④警察と消防のコミッショナー
日本にない言い方ですが、共に組織の最高職位と考えました。警察のコミッショナーは作戦の権限(operational authority)を持つのに対し、消防ハ持たないというのは微妙なところです。消防は緊急性から現場判断重視ということでしょうか。警察は総監、消防は局長としました。