委員会メンバー(各署名付き)

Thomas H.Kean          Lee H.Hamilton
   委員長               副委員長

RichardBen-Veniste         Bob Kerrey

Fred F.Fielding          John F.Lehman

  Jannie S Gorelick         Timothy J. Roemer

   Slade Gorton            James R.Thompson


委員会スタッフ

Philip Zelikow,    執行委員長

Christpher A. Kojim, 執行副委員長

Daniel Marcus, 顧問

以下スタッフ56名[氏名略]





  まえがき(報告書)
 我々は、この報告とそこから生まれる勧告の物語を、合衆国大統領、合衆国議会、そしてアメリカ国民に対して、彼等の考察のために提出する。大きな党派的分裂の時に当たって、我々国民の首都の選出された指導者たちによって選ばれた、共和党五名、民主党五名よりなる十名の委員は、異議なくこの報告書の提出に合意する。
 我々は、国民の要望に応えて、一致した目的のために集まった。「2001911日」は、合衆国の歴史において、予期されなかった衝撃と苦痛の一日であった。国民は不意打ちをくらった。どのようにしてそれは起きたか、またどうすればこのような悲劇の再発を避けることが出来るのか?
 このような質問に答えるため、議会と大統領は「合衆国へのテロリスト攻撃に関する国家委員会(一般法10730620021127日)」を作った。
 我々の任務は広範囲だった。その法律は、我々に「2001911日のテロリストの攻撃に関しての事実と状況」の調査を指示していた。そこには、情報機関、法執行機関、外交、出入国管理、国境管理、テロリスト組織への資産の流れ、民間航空、議会の監視と予算の割当ておよび委員会が関係あると認めるその他の諸分野が含まれていた。
 任務の遂行に当たって、我々は250万ページ以上の書類を見直し、十か国で1,200人以上をインタビューした。そこには、我々の任務がカバーする諸事項に対して責任ある立場にあった、過去および現在の政府の上級職員がほぼ全員含まれていた。
  我々は、独立し、束縛されず、公平で党派性のない存在であろうと努めてきた。当初から、我々はその調査を、出来る限りアメリカの人々と分かち合えるように行ってきた。そのために、我々は19日間のヒアリングにおいて、160人の証人から公開証言を得た。
 我々の目的は個人の責任を問う事ではなかった。我々の目的は9/11をめぐる出来事の、できるだけ詳細な報告を用意し、またそこから学んだ教訓を確認する事だった。
 我々は敵についても学んだ。彼らは高度の知識を持ち、我慢強く、訓練され、死をもいとわない。この敵は、政治的な不公正の解消を要求することで、アラブとムスリム社会から広く支持を集めている。しかし、我々と我々の価値に対する彼らの敵意には限りがない。彼らの目的は、この世から宗教と政治の二元性、一般選挙制度、女性の平等な権利などを排除することにある。その標的として兵士と民間人の区別はなく、その辞書には「随伴被害」(Collateral damage(*)の単語はない。  (*)攻撃対象である軍事目標以外の一般市民などが受ける被害 (訳注)
 我々は、国境警備や民間航空、国家の安全保障に責任がある組織が、このような脅威がいかに重大かを理解しておらず、その脅威を妨げ、打ち負かす準備をしてこなかったことを学んだ。また我々は、政府の中の断層線(fault line)について学んだ―それは国外と国内の情報機関の間にあり、またそれぞれの官庁の間やその内部にも存在した。また我々は、異なる時代に異なる問題に対応して作られてきた、大きく扱いにくい政府組織を横断して、情報を管理し共有することの困難さについても学んだ。
 仕事を始めるにあたって、我々は未来を見るために過去を振り返ると言った。我々は、この報告書に記載された恐ろしい損失から、何か建設的なもの、より安全で強く賢明なアメリカが生み出されることを希望する。九月のあの日、我々は一つの国民として団結した。我々の試練は、単一の目的意識を持って直面する挑戦に立ち向かうことである。
 我々は、テロリストを攻撃し、彼らの集団の膨張を妨げると同時に、我々の国を将来の攻撃から保護する、均衡のとれた長期の戦略を設計する必要がある。我々は、自分たちの政府をいかに組みたてるべきか、その方法をこれまでずっと模索し続けてきた。二十世紀の大きな闘争の中で拡大した膨大な官庁は、すべての力が結合される新しい方法で、協力して機能しなくてはならない。議会は、監視の強化と説明責任に焦点を合わせた徹底的な改革が必要である。
 この最終報告を完成するに当たり、まず仲間の委員たちへの感謝から始めたい。この任務に対する彼らの貢献は絶大であった。我々は、すべてのページにわたって共に論議した。この意見交換は有益だった。共に働いた仲間の知識と判断に感謝と共に大きな敬意を表したい。
 我々はまた、委員会のスタッフにも感謝したい。フィリップ・ゼリコウに率いられた献身的でプロフェッショナルなスタッフは、この消耗する課題を引き受けるために、他の重要な業務を脇に置いて、膨大な時間をこの報告書の完成のために捧げた。彼らはこの委員会創設以来、過酷な調査業務に従事した。彼らは良い助言を提供し、我々の指導を忠実に実行した。見事な仕事ぶりだった。
 我々は、議会と大統領に感謝する。その事務局は、我々のために記録を探し、多くの書類を作った。また時間を惜しむことなく我々に見解を提供した、現在および過去の職員たちに感謝する。FBIのペンタゴン・ツインタワー爆破(PENTTBOM)[調査]チーム、CIA長官の再調査グループ(Director’s Review Group)、司法省およびCIA監察官inspector general)からは大きな援助を得た。彼らの調査への尽力、細部にわたる入念な注意、知り得た事実を直ちに報告し、共有してくれたことを大変ありがたく思っている。また我々は先行した幾つかの委員会の作業に立脚している。我々は、議会の合同喚問に感謝する。その見事な作業は我々のスタートを助けた。我々は、文書と証人についてニューヨーク市に感謝する。またこの報告を大衆に広めることを助けた政府印刷局および W.W.ノートン社に感謝する。
 我々は、この感謝のリストを完全な輪として閉じることにする。我々は9/11の家族に感謝する。彼らの粘りと献身が委員会の創立を助けた。彼らは各々の段階において、パートナーとして、また証人として常に我々と共にあった。彼らは、我々が行ってきた仕事の重要性を、我々の誰よりも良く知っている。
 我々は、何が出来、何が出来なかったかをここに記しておきたい。我々は911日の出来事で、何が起きたか、また何故起きたかを、出来る限り完全な報告として提供するよう努力してきた。この最終報告は、我々が行ってきたことの概要であり、我々が調査した対象の断片の引用に過ぎない。しかし、これほど多くの問題や組織に関わる、これだけ大規模な出来事において、我々は自分たちの限界に気付いている。我々は、見識のあるすべての人たちにインタビューすることが出来たわけではなかった。また関連するすべての記録を見つけたわけではない。将来、新しい情報が明るみに出ることは必至である。我々は、この報告を、我々の国家の歴史における画期的事件の間違いない理解の基礎として提出する。
 我々は圧倒的な個人的悲劇や、また英雄的で勇敢な驚くべき行為について聞いてきた。我々は9/11の出来事がアメリカ人に与えた信じがたい衝撃について検証した。また彼らがそれに耐えながら示した、驚くほどの回復力と勇気をも調査した。我々は、次なる悲劇を防ぐため、最善を尽くそうという彼らの決意と、もし必要とあらば敢然と立ち向かおうとする心構えに感じいった。我々はこの調査を通じて、犠牲者と彼らが愛した人たちに対する大きな共感と、アメリカの人たちに対する尊敬の念が湧いた。前途に横たわる恐ろしい挑戦が認識される。
 我々はまた、謙虚さを持ちながら勧告の作業に取り掛かる。その数は限られている。我々は意識して最も重要であると信ずる勧告に絞った。それに従って行動すれば結果に大きな差が生じるだろう。どうすれば、うまく行くかについて、確固たる判断を持ってこの作業に入った。こうした問題を研究し、他者の意見に耳を傾けながら、我々は皆、立ち止まり、振り返り、時にはこの問題を学び、また他者の考えを考慮することによって、自分の考えを変えなければならなかった。我々は、この国の歴史における画期的な出来事を、より正しく理解するための土台としてこの報告書を提供する。我々は、この報告書が仲間の市民を勇気づけ、彼らが学習し、反省し、そして行動することを希望する。
         委員長 トーマス・H・キーン ( Thomas H. Kean )

          副委員長 リー・H・ハミルトン  (Lee H. Hamilton )






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